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最高裁判所第二小法廷 昭和25年(れ)4号 判決 1950年6月23日

主文

原判決を破毀する。

本件を名古屋高等裁判所に差戻す。

理由

名古屋高等検察庁検事長代理檢事若林虎之助の上告趣意について。

本件は第一審津地方裁判所上野支部で昭和二三年六月一七日被告人に対し懲役一年、三年間執行猶予の有罪判決を言渡したところ、被告人はこれを不服とし同月二一日控訴申立をなし第二審検事は第一審の科刑を失当として附帯控訴をした事件であるが原審は審理の結果昭和二四年一一月一七日被告人に対し懲役六月、三年間執行猶予の判決を言渡したものであることは記録上明かである。ところが原審昭和二四年一一月一〇日の公判調書をみると被告人は原審公判廷で本件以外に猪を買ったことで事件を起し昭和二四年四月から三重刑務所において服役中である趣旨の供述をしているのであって右公判調書の記載と上告趣意書添附の判決謄本とを綜合すれば被告人は昭和二四年四月二一日津地方裁判所上野支部で懲役一年六月に処せられ現在三重刑務所において服役中であることが判るのである。然らば被告人は刑法第二五条第一号の「前ニ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルコトナキ者」に該当しないのであるから本件は被告人に対しては執行猶予を附し得ない案件であるに拘わらず原審は被告人の前示公判廷の供述にかかる処刑の事実につき審究するところなくたやすく被告人に対し執行猶予を附したことは審理不尽の違法あるものといわなければならない。それ故論旨は理由あり原判決は破棄を免れない。

よって刑訴施行法第二条旧刑訴第四四七条第四四八条ノ二により主文のとおり判決する。

この判決は全裁判官一致の意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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